ISSYA

4.翌日、ヤジタは部活の朝練で、みんなどこかよそよそしい態度なのが気になった。

翌日、ヤジタは部活の朝練で、みんなどこかよそよそしい態度なのが気になった。気のせいかと思ったが、教室に入ると、何人かはヤジタをちらちらと見てはクスクスと笑う。いよいよ気のせいではない。そのうち男子の一人がヤジタの席へ歩いてきた。
「ヤ、ジ、タ、くーん。昨日、スイとデートしたんだって?」
ヤジタは思わずのけぞった。
「なんの話だよ」
「とぼけんなって。昨日、水族館でおまえらを見かけたってやつが言ってたぞ。おまえ、ガッチガチになっちゃってたって? だっせえの。スイなんか相手にそんな様子じゃ、男としてどーなのよ」
その男子が饒舌に茶化すのを、周りは楽しげに聞いている。スイとマキノはまだ来ていない。ヤジタの目には、全員が敵に見えた。
「勝手なこと言ってんじゃねーよ」
ヤジタは立ち上がった。男子は驚いてヤジタを見上げている。ヤジタは、次に言うべき言葉を知っていた。
スイについて根も葉もない悪口を言っているおまえらに何がわかる。あいつと実際に話したことはあるのか。無邪気で、純粋で、少し影のある人間だ。高嶺の花でもなければ、観賞用のクラゲでもない。俺たちと同じ、心を持った人間だ。
だが、口に出たのは別の言葉だった。

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