ISSYA

1.十七歳のヤジタは、クラスメートのスイに恋していた。

十七歳のヤジタは、クラスメートのスイに恋していた。スイは背が小さく、地味で大人しいのだが、学年中の男子を夢中にさせる魅力を放っていて、高嶺の花と崇められている。
だが。
「二組のあいつ、ウチのクラスのスイが好きらしいぜ」
「マジかよ。身の程を知れっつうの」
「スイのことマジになる奴なんて、バカしかいないよ」
たとえスイに恋していようとも、
誰もそれを口にせず、むしろ口にした者を茶化す風潮が学年全体に蔓延していたし、それどころか、自分の気持ちを隠そうとするあまり、男子はみんな、こぞってスイの悪口を言いふらす。
そんなわけで、スイと会話しようなどという「無謀な」者はいなかった。
ヤジタは、そんな彼らを冷めた目で見る。茶化されるのは嫌だが、好きな子の悪口を言いふらすのは、もっと嫌だった。
スイには、幼なじみのマキノという少女がいる。マキノの話では、二人はもともと家が隣同士で、小中高と同じ学校に通ってきたという。マキノの引っ越しやクラス変えで離れている時間の方が長かったが、高校二年で初めて同じクラスになって喜び合っている。
スイは、マキノ以外の女子から疎ましがられている。女子たちがスイを嫌う理由は特にないが、男子がスイを蔑むことばかり言うのを聞いているので、それにつられて、なんとなくスイのことが嫌いなのだ……ということらしい。
マキノは、男子にスイの悪口をやめるようかけあっている。ヤジタは、何度かそうしてマキノが走り回っているのを見たことがある。そのたびに、男子は申し訳なさそうにするのだが、次の日にはもう忘れている。
スイの気持ちよりも、自分たちの見栄の方が大事なのだ。

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