黄金

 海の向こうに、黄金の国があるという言い伝えがあった。川や山、城壁、そこに住む人間たちまであらゆるものが黄金だといった。
むかし、その国に侵略者があった。言い伝えのとおりなら黄金が手に入るはずだ。ところが、いざ上陸してみれば、ただの水が流れる川、青々とした山、石灰岩でできた城壁、彼らと同じ姿形の人間……。住人がどこかに黄金を隠し持っているに違いない、地下に黄金の世界へ続く秘密の通路があるのかもしれない——と、侵略者は住人を捕らえ、拷問し黄金の在りかを聞き出そうとした。しかし住人は、何も知らないと泣いて助けを乞う。侵略者は堤防を壊し川を氾濫させ、山に大砲を打ち込み、城壁を叩き壊し、白を切る住人を虐殺した。黄金の国は、半日で壊滅した。
唐突に、地平線に沈む夕陽が、川だった水を、山だった土砂を、城壁だった岩を、住人だった屍を黄金に染めた。黄金となった侵略者たちは動きを止めた。呆然と瞬きをしているうちに、黄金の輝きは消え、周囲は静寂な闇に染まった。