「死神のとおりみち」カテゴリーアーカイブ

偶然は、重なるとひとつの道となる。それは世界中のいたるところで、作られる。歩く人間にとって都合のいい偶然が重なれば「幸運」という道となり、都合の悪い偶然が重なれば「不運」となる。そうして作られる道の中に「死神のとおりみち」と呼ばれる道がある。それは、都合のいい偶然と悪い偶然が溶けあって混沌とした空間をつくり、あらゆる光を吸い尽くす。その空間を通ることができるのは、死神のみ。死神がそこを通るとき、すべてが無にかえる。その道も、まるごと。

6.スイの通夜には、クラス全員が参加した。

スイの通夜には、クラス全員が参加した。泣いているのはマキノだけで、他の生徒たちはみんな、唇を固く結んで俯いている。
ヤジタも、涙は出なかった。みんな、泣く資格などない——。
そこに、マキノが来た。
「スイのこと好きだったのに、泣かないなんて、冷たいね」
マキノは、真っ赤に泣き腫らした目を向けてくる。
「泣きたくないわけじゃない。俺だって悲しいよ」
本心だった。 続きを読む 6.スイの通夜には、クラス全員が参加した。

5.ヤジタは午後の授業が始まる前に、スイに早速メールを送った。

ヤジタは午後の授業が始まる前に、スイに早速メールを送った。

〈ヤジタです。マキノから連絡先聞きました。昨日はごめん。直接謝りたいから、あとで電話する〉

授業中、スイの反応が気になって仕方なかった。授業が終わり、休み時間に確認してみたが、返信はなかった。
放課後、部活へ行くため荷物をまとめていると、教室に残っていた男子たちの騒ぐ声が聞こえてきた。 続きを読む 5.ヤジタは午後の授業が始まる前に、スイに早速メールを送った。

4.翌日、ヤジタは部活の朝練で、みんなどこかよそよそしい態度なのが気になった。

翌日、ヤジタは部活の朝練で、みんなどこかよそよそしい態度なのが気になった。気のせいかと思ったが、教室に入ると、何人かはヤジタをちらちらと見てはクスクスと笑う。いよいよ気のせいではない。そのうち男子の一人がヤジタの席へ歩いてきた。
「ヤ、ジ、タ、くーん。昨日、スイとデートしたんだって?」
ヤジタは思わずのけぞった。
「なんの話だよ」
「とぼけんなって。昨日、水族館でおまえらを見かけたってやつが言ってたぞ。おまえ、ガッチガチになっちゃってたって? だっせえの。スイなんか相手にそんな様子じゃ、男としてどーなのよ」 続きを読む 4.翌日、ヤジタは部活の朝練で、みんなどこかよそよそしい態度なのが気になった。

3.ある日、ヤジタは男子に囲まれて漫画やテレビ番組の話題に興じていたが、

ある日、ヤジタは男子に囲まれて漫画やテレビ番組の話題に興じていたが、そのうち「便所行く」と言って廊下に出た。
その瞬間、背後から大きな声が聞こえた。
「ヤジタくん!」
ヤジタは体をこわばらせた。振り返ると、スイが歩いて来るのが見えた。
みんなの視線が、スイとヤジタに集まる。
「今、ちょっと大丈夫?」
スイが笑いかけてくる。 続きを読む 3.ある日、ヤジタは男子に囲まれて漫画やテレビ番組の話題に興じていたが、

2.昼休み。マキノがオレンジジュースを飲みながらヤジタの席まで来た。

昼休み。マキノがオレンジジュースを飲みながらヤジタの席まで来た。
「ヤジタ、スイのこと、ありがとね」
「あぁ、たまたまだよ」
ヤジタがマキノの方を向く。その視線の先に、マキノが何かを見せてきた。ピンク色のパッケージがかわいらしい、いちごミルク。
「何、これ」
「スイから。ヤジタにお礼だってさ」
「なんでいちごミルク?」 続きを読む 2.昼休み。マキノがオレンジジュースを飲みながらヤジタの席まで来た。

1.十七歳のヤジタは、クラスメートのスイに恋していた。

十七歳のヤジタは、クラスメートのスイに恋していた。スイは背が小さく、地味で大人しいのだが、学年中の男子を夢中にさせる魅力を放っていて、高嶺の花と崇められている。
だが。
「二組のあいつ、ウチのクラスのスイが好きらしいぜ」
「マジかよ。身の程を知れっつうの」
「スイのことマジになる奴なんて、バカしかいないよ」
たとえスイに恋していようとも、 続きを読む 1.十七歳のヤジタは、クラスメートのスイに恋していた。