何故かは分からないが、真っ暗闇の中で、首から下が地中に埋まっていて、身動きがとれない。最初は、足首までだった。だから、このぐらい平気だと軽く見ていたのが間違いだった。前に進まなければともがいていたら、いつのまにか、下半身がまるまる埋まっていた。これは本格的に危ないかもしれないと考え、さらにもがいた結果がこれだ。もがこうにももがけない。体は疲弊し、首も回らない。もう、何年この状態でいるのか。この暗闇の主になった気分だ。
そう、私は、この暗闇の主だ。
そう思ったら、気分が楽になった。この暗闇を支配しているのは、私だ。慣れてしまえば、心地良いではないか。
息苦しくなることもある。時々、誰かがやって来て救い出してくれないかと期待することもある。けれど、そんなことはすぐにどうでもよくなる。
もう、私はこれで完成している。今更変える気にはならない。
あるとき、この暗闇の中で、光の筋が見えて、すぐに消えた。またあるとき、再び光の筋が見えて、すぐに消えた。二度目の光は、少しだけこちらに近づいていたようだ。何度か、この光は現れては消え、現れては消えを繰り返していた。光は、近くまで来たかと思えば、遠くへ行くこともあった。次はどこを照らすのだろう。
退屈な暗闇の中で、光のダンスは案外、私の心を刺激した。こういうのも悪くない。私は娯楽として、それを楽しむようになっていた。
その日も、いつものように光の筋が現れ、地面を照らした。
そこには、人の頭があった。
私は、後頭部が痺れた! この闇にいるのは、私だけではなかったのか! 頭上から降り注ぐ光に、その頭はしばらく呆然としていたようだが、突如、断末魔の叫び声をあげて消えた。同時に、光の筋も消え去った。
いまだかつて見たことのない光景に、私は唖然としていた。
また、近くで光の筋が見えた。私は心臓が縮み上がった。そこには人の頭などなく、ただ地面があるだけだった。
それから、光の筋は時々ぽっと現れ、地面を照らしては消えていた。
そして、再び「それ」は起こった。
少し遠くだったが、地面にはっきりと黒いまるい塊が見えた。そして、断末魔の叫びが聞こえ、消えた。
「逃げなければ」と、思った。私も、いつあの光に照らされるかわからない。
私はもがいた。久しく動かしていなかった体を死ぬ気で動かしたが、体がすっかり石のようになっていて動かない。その間も、光の筋は現れては消えていた。光は現れるたびに、私に近づいているような気がした。
そして、とうとう、光は私を照らした!
もうおしまいだと絶望した、その瞬間、私の頭は勢いよく地面に吸い込まれ、そのまま、再び暗闇の中へ、ひたすら下へ下へ落ちていった——。